厚物を綴じるときに厚さに応じた針を選ぶ必要のないステープラーです。専用針一種類で2枚から170枚まで綴じることが出来るのがこのスウェーデン、ラピッド社製のステープラー、デュアックスです。
もう10年以上前になりますが、年の瀬も迫ったとき、 日本担当の営業マンが香港から手作りの試作をアタッシュケースにいれて日本橋蛎殻町の我が社に来ました。この商品の感想を聞きたいとのことでした。それは2枚から170枚まで針を変えずに綴じることのできるステープラーでした。
このステープラーの特徴を一言であらわすのにわかりやすい現象がありました。
展示会でのデモンストレーションの即反応でした。
若い女性達の反響が男性に比べてあまりも違っていたんほです。
すなわち彼女達がオフィスで上司に依頼された仕事の中での頭の痛い仕事のひとつにかなりの枚数を綴じる仕事なのです。
まず適切なステープルを選ぶ必要があります。これが以外と至難の業で、間違えればやり直しですが、これがそう簡単な仕事でなくなってしまうのです。
すなち綴じ直しは厳禁なのです。次ぎに綴じる作業ですが、ハンドルを押すのにかなりの力が要ります。
しかもそのときあまりも押す力が必要なので、本体が動き回り綺麗に綴じるのはかなりの業が要るのです。
このデュアックスはステープルの選択、綴じる枚数に応じて適切な足の長さのステープルを選ぶ必要がありません。
管理の面からも一種類のステープルのストックで済みます
このステープルで2枚から170枚までとじられます
綴じる作業ですが体重を掛けるがごとくハンドルを思いっきり押さなくてもよいです。彼女たちはこれをマスターするべく先輩からもどうの、こうのと説教されたものも恐らくおられるでしょう。このデュアックスではだれでもとくにトレーニングの必要もなく操作できるのです。
型番はイマジネーションが無いと言えばそれまでで “2―170” です。では一体このワザ、軽く、一種類の針で綴じることをどのようにして達成しているのかです。余分な針を切断しているのです。
全く電源、エレクトロニックスを使わずに、要するにセンサーもマイクロスイッチも使わずにどのようにして綴じるものの厚さをはかって針を切断するのかを当初知りたかったのです。
ちなみに名称のデュアックスとはデュはラテン語の“2”duoから来ていて、テコの支点が二つの意味だそうです。
この支点をダブルで応用する技法は後に日本で多くメーカーがパンチ、ステープラーなどで応用し始めるきっかけとなったと言っても言いすぎではないと思います。大変上手なテコの応用編です。
以前アメリカで軽印刷機、特に輪転式の謄写印刷機の開発会社での経験で、日本は世界でも紙に関しては「和紙」、「洋紙」があるだけでなく種類も多く、需要も多岐に広がっているため大変厳しい市場だといやなほどいじめられた経験があります。綴じることも紙との戦いですので大変厳しい市場だと知ってはいましたが案の定でした。最初のステープルのロットはトラブル発生で針の改造が必要となりリコールをしました。
デュアックスの特徴の一つはアンヴィルに針を切断するカッティングメカニズムが付いているのです。
通常のステープラーはアンヴィルで針を曲げてクリンチしているのですが、デュアックスでは不要な針の切断の必要があるわけです。圧縮された紙はあまりもの堅さでそもそもの「木材」に戻ったのではとまで思わせます。
綴じる紙を針が貫通した時点で90度直角に曲げる切断をするべくアンヴィルを下へ落としそのときにテコでカッターを操作する構造の「カッティング・メカニズム」たるアセンブリーを考えて下へ押す力で針を紙を貫通させ → 曲げて → 余分な針を切断しているのです。針を圧縮された木のように堅い紙を貫通させるのですからかなりの力を要するのですがここテコをうまく駆使しています。
今や日本のステープラーもアンヴィルを斜めにしたものが出回っていますがこれは裏のクリンチを平らにすると干渉するので逃げの手法として採用していますが、デュアックスでも余分なステープルを切断する前にやはり干渉をさけるためとステープルの切断する「カッティング・メカニズム」のスペースが要るので斜めにしています。
デモンストレーションのとき最初はその当時アンヴィルが斜めになったものは国産にはなかったので斜めになっている理由をよく聴かれました。
このアンヴィルがついているベースはステープルが貫通するまで固定されていたのがした時点で下へ動くのだがこのアクションがステープルを切断しているのです。
ステープルが貫通するまでは木材のように堅く圧縮された紙を貫通するまでびくともしないようにこのベースはロックされ固定されていなければならのですが、これをアンロックするメカニズムにもワザがありまうす。もレバーでロックを解除する簡単な構造になっています
デモンストレーションツールを試行錯誤していたときに丁度ラピッド社はフランクフルトで毎年1月最後の週に世界最大のステーショナリーの展示会で年次世界マーケティング大会を開催していて弊社は一度表彰されましたがデュアックスを発表にあわせて近郊のゴルフのカントリークラブを貸し切って会食、表彰式、セミナーを開催した折にある海外のディーラーと雑談をしていてお互いにマーケティングの話題でキャッチボールをしていてアイディアが出てきたのは綴じサンプルが必要だよね………といううちにだいたいセールスツールのアイディアがまとまとまりました。
これを出発点に帰国してから製作に取りかかりました。その結果幅50㎜、長さ190㎜で枚数を170枚、100枚、50枚、20枚と4種類の枚数を揃えて170枚のところでデュアックスでとめた「綴じサンプル」を完成させました。